避難所へ畳を届け、そのあと産地へ何度も通った8月

この8月、熊本へ何度も車を走らせました。

最初は避難所への畳の搬入。その後は八代市と宇城市へ、い草の生産者さんの話を聞きに行くためです。

どちらも、畳屋として見ておかなければならない現場でした。

避難所へ畳を届けた二日間

今回の震災では、全国の畳店が避難所へ新しい畳を届ける「5日で5000枚の約束。」が動きました。

私も二日間、現地で畳の搬入を手伝わせていただきました。

硬い床に畳が入ると、座れる。足を伸ばせる。横になれる。

畳ですべてを解決できるわけではありません。それでも、

「畳を見るとうれしくなる」

「畳があると笑顔になれる」

そう言ってくださる方がいました。

避難所へ畳を運んだことを、手柄のように書きたいわけではありません。

ただ、そのとき届けた畳の表面に使われている「畳表」を作る産地が、今度は支えを必要としています。

その畳表を作る産地へ

避難所への搬入後、今月は八代市と宇城市のい草産地へ何度も足を運びました。

写真の建物は、収穫後のい草を保管していた倉庫です。震災で大きく潰れていました。

令和8年熊本地震で外壁と柱が大きく崩れたい草保管倉庫
震災で大きく壊れた、収穫後のい草を保管していた倉庫。

潰れた倉庫に残っていたい草

中には、刈り取りを終え、これから畳表になるはずだったい草が残されています。

持ち主の方は、潰れた建物のわずかな隙間から、取り出せるい草を懸命に運び出したそうです。

令和8年熊本地震で壁と梁が大きく損傷したい草保管倉庫の内部
倉庫の内部。刈り取りを終え、これから畳表になるはずだったい草が残されていました。

い草は、収穫できたら終わりではありません。

乾燥させ、保管し、選別し、織機で畳表に仕上げます。育て終えたい草も、保管する倉庫が壊れれば使えなくなることがあります。

写真を見ただけでは、そこまでは分からないと思います。

倒壊した保管倉庫の内部に残る乾燥したい草
潰れた建物のわずかな隙間から、取り出せるい草を運び出したと聞きました。

水と織機の問題

困り方は、地域によって違いました。

農業用水が足りないところがある一方で、普段より水が多いところもあるそうです。

これから用水路の大がかりな修復が始まり、水が止まれば、次のい草を育てるための苗にも影響が出ます。

支援を受けて生産を続けようと決めた方もいます。ただ、次の植え付けはかなり減るかもしれないと、現地で聞きました。すべての農家さんが同じ状況ではありませんが、先の見えない状態が続いています。

織機の問題も深刻です。

一年前の水害で壊れた織機でさえ、まだ修理が終わっていません。その修理を待っているところへ、今回の震災が来ました。

水害に備えて織機を高くしていたところでも、地震で下のブロックが崩れ、機械ごと倒れたと聞きました。

使われていない織機を借りられないか。何とか畳表を織り続ける方法はないか。皆さん、今できる方法を探しています。

い草が育っても、織機が動かなければ畳表にはなりません。

壊れた機械や倉庫を直せば済む、という単純な話でもありません。

生産者さんには高齢の方も多く、大きなお金をかけて機械を修理したり、建物を建て直したりしても、その費用を取り戻せるか分からない。今回の被災を機に、い草の生産をやめると決めた方もいると聞きました。

産地を偽らないでほしい

国産畳表が少なくなれば、外国産の畳表を国産と偽って売るところが出てこないか。そこも心配しています。

外国産を使うこと自体が悪いのではありません。

どこの産地のものを使ったのか、正直に伝えればいい。それを偽ることがいけないんです。

お客様をだますだけでなく、い草を育て、畳表を織り続けている生産者さんまで裏切ることになります。

青畳工房は、これからも国産い草で織られた畳表を使います。

今月、現地へ通って思ったこと

何度現地へ行っても、この先どうなるのかは、まだ分かりません。

今月、私がしたのは、避難所で畳を運び、産地へ行き、生産者さんの話を聞くことでした。

大きなことができたわけではありません。

ただ、自分が見たこと、聞いたことを、知らないふりはしたくありません。

まずは、畳に使われるい草の産地で、今何が起きているのかを知ってもらえたらと思います。

畳マン六代目
古賀隆夫

この記事を書いた人
畳マン六代目

青畳工房 六代目の古賀隆夫です。1982年生まれ、一級畳製作技能士。創業170余年の畳店を受け継ぎ、佐賀市水ヶ江を拠点に畳替えを行っています。

国産い草にこだわり、畳の状態を確認して、表替えで済むか新畳が必要かを正直に判断します。家具移動や素材選びも、六代目本人がご相談から施工まで対応します。

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