
こんにちは、畳マン六代目です。私は、創業170年以上続く老舗畳店「青畳工房」の六代目として、畳製作一級技能士の資格を持ち、これまで数多くの畳トラブルを解決してきました。
そんな私のもとに、よく寄せられる質問のひとつが「畳に掃除機をかけても大丈夫なの?」というもの。
フローリングとは違い、い草という自然素材でできた畳はとてもデリケートです。間違ったお手入れを続けると、せっかくの畳の美しさと耐久性を損なう恐れがあります。
ここでは、畳を傷つけずに掃除機をかける正しい方法から、やりがちなNG行為、さらには畳におすすめの掃除機までを徹底的に解説します。ぜひ、ご自宅の和室を長くきれいに保つための参考にしてくださいね。
畳掃除の基本:畳の目に沿って丁寧に
畳の目に沿うことが最重要ポイント
畳に掃除機をかける際は、畳の目に沿ってゆっくり動かすのが大原則です。
畳の目に逆らって力強くゴシゴシ動かすと、い草がほつれたり、毛羽立ったりしてしまう原因に。
さらに、畳の目に押し込まれた細かいゴミが取りにくくなり、劣化を早める可能性もあります。
時間をかけてゆっくりかける
早く終わらせようと、サッと一往復するだけでは十分にホコリやダニを吸い取れません。
畳1枚につき40〜60秒ほどかけて、吸引力は弱~中程度に設定。時間をかけて丁寧に行うことで、畳を傷めず、効果的な掃除ができます。
絶対にやってはいけないNG行為
1. 畳の目に逆らってゴシゴシ
畳の目とは反対方向に掃除機をかけると、い草が傷つきやすくなります。
毛羽立ちだけでなく、畳表の織り目からゴミがさらに奥へと入り込み、吸い取りにくくなる悪循環に。掃除は常に畳の目に合わせて行いましょう。
2. 水拭きのしすぎ
畳はい草が水分を吸いやすく、過度な水拭きはカビや変色のリスクを高めます。
どうしても水拭きが必要な場合は、固く絞った雑巾でさっと拭き、すぐに乾拭きと換気で湿気を飛ばしましょう。畳を濡れた状態で放置すると、内部に湿気がこもりやすくなるので要注意です。
3. 重曹やセスキ炭酸ソーダの使用
アルカリ性の洗剤は、い草を変色させたりシミを作る危険性があります。
フローリング掃除では便利なエコ洗剤も、畳には不向き。黒ずみや取り返しのつかない変色を防ぐためにも、アルカリ性クリーナーの使用は避けましょう。
4. 粘着式カーペットクリーナー(コロコロ)の多用
畳表に強い粘着が当たると、い草がほつれたり引き抜かれる恐れがあります。
コロコロを使うなら粘着力が弱いタイプに限り、力を入れずサッと優しく転がす程度にとどめると安心です。可能であれば、別の掃除方法に切り替えるほうがベターでしょう。
畳掃除におすすめの方法・道具
1. ほうきで目に詰まったゴミを掻き出す
昔ながらのほうきは、畳に入り込んだ細かいゴミをかき出すのが得意です。
掃除機が苦手とする隅や畳ヘリ近くも、ほうきならしっかり届きます。ほうきを使用するときも、畳の目に沿って、やさしく掃きましょう。
2. 掃除機で見えないホコリやダニを吸引
掃除機を使う際は、吸引力を弱〜中程度に設定して、畳の目に沿ってゆっくりかけるのがコツ。キャニスター型の掃除機を使う場合は、本体を畳に引きずらないように注意してください。
コードレススティック型の掃除機だと、部屋の移動が多い場合でも取り回しがラクで、畳を傷つけにくいです。
3. フローリングワイパーは仕上げに活用
フローリングワイパーは、表面のホコリをサッと取るのに便利。
ただし、ワイパーシートだけでは畳の目に入り込んだゴミまでは取り切れません。あくまで仕上げや軽い掃除用に使い、定期的には掃除機やほうきでしっかり掃除しましょう。
畳にやさしい掃除機を選ぶコツ
和室モード・畳モードがある機種
最近の掃除機には、畳専用モードを備えているものがあります。吸引力を自動で調整して、畳を傷めずにゴミを吸い取ってくれる設計です。
もし新しく掃除機を購入するなら、このようなモードを持つ製品を検討すると安心です。
コードレススティック型
キャニスター型のように本体を引きずる心配がないため、畳を傷つけにくく部屋間の移動もしやすいのが利点。
充電さえしておけばサッと取り出して使えるので、こまめに畳掃除したい方にピッタリです。
タービンブラシ or ソフトブラシのヘッド
ブラシの回転が強すぎると、畳表を引っ張って傷めるリスクが高まります。
- タービンブラシ:空気の力で回転するため、モーター駆動ブラシよりも畳表への負担が少なめ。
- ソフトブラシ:素材が柔らかいので、繊細ない草を傷つけにくい設計。
正しい掃除で畳を長持ちさせよう
畳のメンテナンスは、定期的な掃除機がけと湿気対策が基本です。
畳は呼吸する素材と言われるほど吸放湿性に優れており、快適な室内環境を保ってくれます。
その反面、扱い方を誤ると寿命が大幅に短くなることも。
もしダメージが進んでしまった場合は、表替えや裏返しで再び美しい状態に戻せるケースがあります。畳の状態を見極めつつ、必要に応じて専門家に相談するとよいでしょう。