【畳マン六代目の徹底解説】畳屋の仕事と怪我のリスク|慣れが一番の敵

畳マン六代目
畳マン六代目

こんにちは、畳マン六代目です。
私は畳製作一級技能士として、日々畳づくりや畳替えなどの現場に携わっています。畳屋は一見落ち着いた和のイメージがあるかもしれませんが、実は鋭利な刃物を扱いながら作業する危険な一面も。
さらに毎日同じ作業を繰り返す職人仕事ゆえに、「慣れ」からくる油断が大怪我につながることも珍しくありません。
ここでは、畳屋の現場で使われる道具や刃物、遭遇しやすいケガのパターン、そしてケガを防止するための具体的なポイントを深堀りして解説します。
「畳屋がどんな仕事をしているのか」や「なぜケガのリスクが高いのか」を、より詳しく知っていただくきっかけになれば嬉しいです。


畳屋の仕事内容:繊細さと力仕事の両立が求められる現場

・畳づくりは“裁断”と“縫製”が要

畳屋の主な仕事は、以下のような工程を経て畳を製作・修繕することです。

  1. 畳床(たたみどこ)の加工・裁断
    ・ワラ床、建材床などの芯材を寸法どおりに切り、部屋の形に合わせて加工する
  2. 畳表(たたみおもて)の裁断・縫製
    ・い草や和紙表を必要な大きさに切り、畳床に対して畳用ミシンまたは手縫いで縫い付ける
  3. 畳縁(たたみべり)の取り付け
    ・畳の側面に縁素材を縫い合わせ、見た目や部屋のインテリアに合わせた仕上がりに

これらの工程はいずれも、正確な寸法鋭利な刃物を使った作業が欠かせません。
裁断を誤ると畳が部屋に合わなくなり、少しのミスが大きな不良品につながるため、職人は常に集中力を求められます。

・持ち運び&施工は力仕事

畳の製作だけでなく、実際にお客様のお宅へ伺って古い畳を引き上げたり、新しい畳を敷き込んだりするのも大切な業務です。

  • 1枚あたり約15〜30kgほどの重さ
  • マンションやビルの上層階へ持ち運ぶこともある
  • 曲がった廊下や急な階段を通るときはバランスを崩しやすい

こうした力仕事が加わることで、足元が不安定になったり、集中力をそがれたりし、刃物事故以外のケガ(ぎっくり腰や捻挫など)に見舞われる可能性も出てきます。


畳屋が使う刃物:正確かつ素早いカットが要求される

・畳包丁

  • 特徴:厚みのある畳床を一気に切り落とす力強い包丁
  • 用途:畳表や畳床をまっすぐ、あるいは斜めにカットする際に使用
  • 危険度:大
    ・短時間で深く切り込めるため、一瞬の油断で指や手を切り落としかねない

・カッター

  • 特徴:小回りが利き、手元の微調整がしやすい
  • 用途:畳縁の端処理、細かい部分のトリミングなど
  • 危険度:中〜大
    ・意外に深くまで切り込めるうえ、連続作業で刃がすり減ると切れ味が落ち、余分な力を入れがちになる

・畳製作機械の刃物

  • 特徴:高速回転するチップソーや刃を備えた自動裁断機、縫着機など
  • 用途:大量の畳を効率よく裁断・縫製する
  • 危険度:非常に大
    ・機械の動きは一瞬で、手袋や服が巻き込まれると大事故につながる可能性がある

怪我は日常茶飯事!?畳屋の“あるある”トラブル

・よくある怪我

  • 畳藁(わら)が刺さる
    ・一見柔らかそうに見える藁床も、切断面や繊維が鋭い部分があり、深く刺さると出血することも
  • タッカーの針が残っている
    ・リフォーム畳や古い畳を扱うときに、予想外の場所にタッカー針が刺さっていて指を傷める
  • 刃物による切り傷
    ・長時間の作業で疲れが溜まり、ぼーっとしているときにカッターや包丁が指に当たってしまう

・怪我が増えるタイミング

  • 繁忙期で作業が立て込んでいる時期
    ・急ぎの納期に追われ、焦りから安全確認がおろそかになる
  • 新入社員やアルバイトが入ったばかりの時期
    ・道具の扱いや安全意識が不十分で思わぬ怪我をすることがある
  • 連日の徹夜や夜遅くまで作業が続くケース
    ・疲労の蓄積で集中力が落ち、ケガ率が上がる

実体験:慣れが原因で深く指を切った話

私自身も、「いつもどおり作業しているから大丈夫だろう」という油断から指を深く切ってしまいました。

  • 傷口:人差し指の爪先端から縦に約3cm
  • 爪が縦に割れ、激痛と出血
  • 病院にて医療用テープと包帯で固定
  • 幸い骨や神経は無事でしたが、当分の間は作業に支障をきたし、手洗いもろくにできない状態に

・怪我の教訓

  • 「慣れ」は最大の敵
    ・同じ作業を繰り返しているうちに「これくらい大丈夫」という慢心が生まれる
  • 道具のメンテナンスや身体のコンディション管理が不可欠
    ・切れ味が悪い刃物を使っていると、余計な力を入れるため事故が増える
    ・寝不足や疲れが溜まっていると注意力が散漫になりやすい

怪我を防ぐための心構えと具体的な対策

・常に緊張感を持って刃物を扱う

  • 「注意1秒、怪我一生」を肝に銘じる
  • 作業前には刃物や道具を点検し、欠けや歪みがないか確認
  • 手袋や軍手を使用する際も、どの作業なら安全かを見極める

・作業環境を整える

  • 作業台や机の高さを身体に合ったサイズに
    ・無理な姿勢で刃物を扱うと力のコントロールが難しくなる
  • 照明や換気を十分に確保
    ・暗い場所やホコリが舞う環境だと、視界不良や呼吸トラブルで集中力が低下

・道具のメンテナンスをこまめに行う

  • 刃物の研ぎ・取り替え
    ・刃こぼれがあれば即交換、研ぎ直しをする
  • 機械の点検
    ・回転刃のゆるみや油切れがあると事故につながる

・健康管理と休息

  • 長時間の作業を避け、適度に休憩を挟む
    ・特に夏場は熱中症対策をし、体力の消耗を抑える
  • 睡眠不足や過度な残業を避ける
    ・疲れ切った状態で刃物を扱うのは極めて危険

・新人への安全教育

  • 基本的な刃物の扱い方や危険箇所の周知
    ・具体的な事例を交えて教えると、イメージしやすくなる
  • 慣れるまでは必ず先輩と二人体制で作業
    ・危険な手順を自己流で行わせないようにする

まとめ|怪我を防ぎ、安全に作業するために

畳屋は和の文化を支えながら、多様な道具を駆使して高品質な畳をお客様に届ける仕事です。一方で、

  • 繰り返しの作業で“慣れ”が油断を生む
  • 鋭い刃物と重い畳を扱うため、常に怪我と隣り合わせ

というリスクも持ち合わせています。
大切なのは、「これくらい大丈夫」という慢心を排除し、常に安全第一の意識を持つこと。
そして、道具や作業環境の整備、休息をきちんと取るなどの基礎が徹底されていれば、怪我は大幅に減らせます。私自身、苦い経験を経て、今一度“初心”に戻りながら仕事に取り組んでいます。

もし同業の畳職人さんが読んでくださっているなら、改めて安全意識を高めていただければ嬉しいです。
また、お客様には「畳屋の仕事がどれだけ危険と隣り合わせか」を知っていただき、職人技の大切さを感じていただければ幸いです。
これからも安全第一で、最高の畳をお届けしてまいります!

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この記事を書いた人
畳マン六代目

創業170余年・青畳工房の「畳マン六代目」こと古賀隆夫。
古賀畳工業所から法人化し現在、正式な社名は「株式会社WT」であり、その代表取締役。
1982年生まれの畳製作一級技能士。

佐賀工業高校卒業後、3年間週1回の畳訓練校に通いつつ福岡県の中村製畳店にて弟子として修行。
その後ご縁があり山口県の荒川氏や奈良県の浜田氏など畳製作技術のスペシャリストの方々を師事することで通常業務では知り得ない技術の真髄を学ばせて頂く。

国産畳表を愛し、佐賀県最後のイ草生産者吉丸氏や、熊本県八代市のたくさんのイ草生産者さん達との繋がりを最高の財産だと考えている。

「中国産イ草を使わなければならないのであれば、その仕事はキッパリ断る」がポリシー。

時には伝統的な技術と新しいアイデアを融合し、家族が笑顔でほっとする空間作りを目指しています。

ありがたいことに地元佐賀や福岡のメディア取材多数頂いてます。
STS・NHK・ぶんぶんTV・FBS・FM佐賀・NBC・えびすFM・雑誌新聞等

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