和室で加湿器を使っただけで、すぐ畳にカビが生えるわけではありません。気をつけたいのは、加湿器から出た風や細かな水滴が同じ場所へ当たり続けること、窓や壁の結露が畳へ落ちること、給水時にこぼした水が畳の合わせ目へ入ることです。
「設定湿度を守っているから大丈夫」と数字だけを見るのも早計です。加湿器の表示は機器の周辺を測った値で、冷えた窓際、家具の裏、畳の表面まで同じ状態とは限りません。運転中の表示と一緒に、運転後の窓、壁、畳を目で見ます。
機種によって加湿方式、吹出口、必要な離隔、給水方法は違います。設置や手入れは、使用中の機器の取扱説明書を優先してください。畳について見る場所は、吹出口の先、窓際、給水まわりです。
置く場所より先に、吹出口の先を見る
加湿器を部屋の中央に置くか壁側へ置くかは、部屋の広さや機種で変わります。畳の上か台の上かだけで決めず、まず吹出口の先に何があるかを見てください。
畳や壁へ風が直接当たっていないか
吹出口が下向き、または斜め下へ向く機種では、同じ畳へ湿った風や水滴が集中することがあります。壁、障子、カーテンへ直接当たる向きも避けたいところです。家具や壁への直接風を避けるよう記した取扱説明書もありますが、必要な距離は機種ごとに違います。
電源を入れた直後だけでなく、しばらく運転したあとに、吹出口が畳や壁へ向いていないか、周囲へ水滴や色の変化が出ていないかを見ます。変化があればいったん運転を止め、説明書に沿って位置や向きを見直します。
安定した平らな場所か
畳には縁や畳同士の段差があり、置く場所によって本体が傾くことがあります。ぐらつく場所、通るたびに足が触れる場所、犬猫や子どもが倒しやすい場所は避けます。台を使う場合も、機器の重さと水を入れた状態に耐え、吸気口や吹出口をふさがないものにします。
畳を守るためにビニールや厚いマットを広く敷きっぱなしにすると、その下の変化へ気づきにくくなります。受け皿などを使えるかは説明書を確かめ、周囲の畳が見える状態を残してください。
窓際へ寄せすぎていないか
室内が適度な湿度でも、外気で冷えた窓や壁には結露が出ることがあります。窓際は機器の湿度センサーにも影響する場合があるため、「窓が乾燥して見えるから」と近くへ寄せるのは避けます。
加湿器と窓が離れていても、窓枠から水滴が落ちれば、下の畳や畳縁へ入ります。カーテンの裾、窓台、畳の端まで続けて見ることが大切です。
運転中より、止めたあとに残る水分を見る
運転中は乾いて見えても、夜間に室温が下がると窓へ結露が出ることがあります。朝にカーテンを開けたとき、窓だけでなく、その下の畳に色の変化や水滴がないかを見ます。
確認する場所は四つです。
- 窓ガラスと窓枠に水滴が続いていないか
- 壁や障子の一部分だけ色が濃くなっていないか
- 加湿器の周囲に細かな水滴が落ちていないか
- 畳の合わせ目や畳縁が周囲より湿っていないか
結露が出た日は、表示湿度だけを下げて終わらせず、運転時間、窓際の冷え方、暖房や換気の状態も見直します。「何%なら畳にカビが生えない」という一つの境界はありません。部屋の温度差、空気の流れ、畳の上に置いた物でも水分の残り方が変わるからです。
座卓やたんすがある和室では、家具の裏や壁側も見落としやすい場所です。家具に遮られた風が壁側へ回り、窓際や部屋の隅だけ冷えていることがあります。重い家具を毎日動かす必要はありませんが、手が届く範囲の畳縁、壁との境目、家具の脚元に濃い色や湿った臭いが出ていないか、ときどき視線を下げて見ます。
窓の水滴を拭いた布や濡れたカーテンの裾を、そのまま畳へ置かないことも大切です。加湿器本体から離れた水分でも、同じ畳へ繰り返し触れれば、その場所だけ乾きにくくなります。結露を拭いたあとは、窓の下に水が残っていないかまで確かめます。
畳には湿気を吸ったり放したりする性質がありますが、加湿器から水分を加え続けても無制限に受け止められるわけではありません。布団、カーペット、座布団を敷いたままにすると、その下は運転後の変化を見落としやすくなります。
給水や移動でこぼしたときは、合わせ目を先に見る
タンクを戻すとき、本体を動かすとき、給水したタンクの外側についた水滴でも畳は濡れます。タンク周りの水滴を拭くこと、本体を移動するときの排水方法は、取扱説明書に従います。水が入ったまま本体を傾けるとこぼれる機種もあります。
畳へ水をこぼしたら、広げるようにこすらず、乾いた布で上から押さえて水分を取ります。畳の目に沿って、濡れた範囲の外側まで確かめます。合わせ目へ流れた場合は、表面が乾いても畳床や床板側へ水分が入っている可能性があります。
熱い風を近くから当てる、濡れた畳へ洗剤を重ねるといった自己流の処置は、変色や傷みの原因になり得ます。電源部やコードまで濡れた場合は、畳の手入れより機器の安全が先です。濡れた手で触らず、メーカーの案内や取扱説明書に従ってください。
乾いたあとも臭いが戻る、畳縁の際が変色する、押すと湿った感触が続く場合は、畳表の下まで見た方がよいことがあります。いつこぼしたか、どのくらいの範囲だったかを残しておくと、畳を上げる必要があるか話しやすくなります。
迷いやすい二つの場面
畳の上へ直接置いてはいけませんか
一律に禁止とは言えません。機器が安定し、吸気口や吹出口をふさがず、畳へ水滴が落ちないことが前提です。畳縁や畳同士の段差でぐらつく、給水のたびに周囲が濡れるなら、その場所は向きません。専用台や受け皿の使用可否を含め、取扱説明書で確かめてください。
表示湿度が低ければ、運転を強くしてよいですか
本体の表示が低くても、冷えた窓や家具の裏に結露が出ていることがあります。数字を上げる前に、センサーの位置、窓の水滴、吹出口の先を見ます。設定方法は機種の説明書に従い、窓や畳に水分が残る状態で運転だけを強くしないようにします。
黒い斑点や臭いがあるなら、加湿器だけを原因にしない
すでに黒や白の斑点、粉状の付着、強い臭いがある場合は、原因を加湿器だけに決めつけないでください。外壁側の冷え、窓の結露、寝具、家具の裏、床下などが重なっていることがあります。
発生したカビの見分けと対処は畳のカビの原因と対処、小さな虫やかゆみが気になる場合は畳のダニの原因・見分け方と対策へ分けています。新しい畳の日常管理は新しい畳の乾拭きと換気をご覧ください。
置き場所に迷ったら、加湿器だけを撮るのではなく、窓、壁、畳まで入る部屋全体の写真を一枚残しておくと分かりやすくなります。畳の変色や湿りが続くときは、その全景と気になる部分の接写があれば、加湿器の向き、窓際、畳の合わせ目のどこから見ればよいかを一緒に考えられます。
和室で加湿器を使うかどうかより、どこへ水分が残ったか。運転を止めたあとの窓と畳まで見ることが、最初の確認です。


